ヨルシカ「ルバート」歌詞の意味を考察|タイトルの音楽用語・レコードの意味・アルバム『二人称』との関係を解説

2026年

ヨルシカ「ルバート」とはどんな曲?基本情報まとめ

「ルバート」は、ヨルシカの5thフルアルバム『二人称』(2026年3月4日配信)に収録された楽曲で、アルバム12曲目に位置する。作詞・作曲・編曲はすべてn-bunaが手掛けており、n-buna自身は「踊る女性をイメージして書いた曲です」と語っている。間奏部では、アルバムでトランペットを担当している寺久保伶矢がアドリブでソロを吹いており、ジャズやラテンの香りを帯びた独特のサウンドに仕上がっている。

アルバム『二人称』は書簡型小説と連動した22曲収録の大作だが、「ルバート」はその中でも特別に軽やかで跳ねるような空気感を持つ一曲だ。ヨルシカの楽曲には珍しい「楽しい!」という言葉が繰り返されるこの曲は、重厚なコンセプトアルバムの中にあって、鮮明なアクセントとして機能している。

タイトル「ルバート」の意味——音楽用語として読み解く

「ルバート(rubato)」はイタリア語を語源とする音楽用語で、「自由なテンポで演奏する」という演奏指示を意味する。本来決まったリズムから意図的に外れ、演奏者の感性で揺れながら奏でる——それが「ルバート」だ。

この言葉が歌詞の冒頭で「ルバート刻んでる私の鼓動マーチみたい」と登場することで、主人公の感情や生き方そのものが”ルバート”であるという構造が示される。正確なリズムに従えない、ポップに合わせられない、それでも自分のペースで鼓動を刻んでいる——この曲全体のテーマを、タイトルの一語が象徴している。

さらに歌詞には「ダカーポ(da capo:最初に戻る)」「ヴィヴァーチェ(vivace:活発に)」という音楽用語も登場し、楽曲全体が音楽の言語で紡がれた世界観になっている。

歌詞の意味を考察——「レコード」「ポップじゃない」が指すもの

「ルバート」の歌詞を読み解く上でのキーワードは「レコード」と「ポップじゃない」という二つの表現だ。

「飽きるくらいに回していたのそのレコード」——ここでのレコードは、自分がずっと大切にしてきたもの、あるいは自分のアイデンティティとも読み取れる。しかしそれは「メロがポップじゃないから少しダサいけど」と自覚されている。大衆には受け入れられにくい、少しズレたもの。それでも「私忘れようとしているわ 悲しい歌を愛しているの」と、自分がそれを愛してきたことを肯定している。

二番では「お葬式の遺影にしましょうこのレコード」とまで言い切る。自分が愛してきたものを一度”葬る”ほど決意して、「飽きのないもの」を探し続けている。しかしその探求は暗くはなく、「お日様とのダカーポくらい 楽しい!」という明るい反復で締めくくられる。悲しみも喪失も、この曲の中では全部「楽しい」に変換されていく——その逆説がこの曲の核心だ。

「あなたも笑ってる?」という問い——ズレを笑われる者の自由

「誰もが笑ってる そんなにこれはポップかい? 違う、お前のずれたセンスを馬鹿にしてんのさ」というラインは、この曲の中で最も鋭い瞬間だ。笑われているのは自分のセンス——しかし主人公はそれを認識しながらも「馬鹿なりにでも愛していたの 踊るみたいに踊っていたの!」と返す。

自分が”ズレている”ことを百も承知で、それでも踊り続ける。「踊るみたいに踊る」という同語反復は、理由もルールも関係なく、ただ踊ることそのものに意味があるという宣言だ。ルバートとは自由なテンポ——この主人公は、誰かのリズムに合わせることを辞めた人間の話をしている。

『二人称』というアルバムの中での「ルバート」の役割

アルバム『二人称』は、詩を書く少年が「先生」と手紙を交わしながら言葉の世界を知っていくという書簡型小説と連動した構成になっている。重厚なコンセプトの中で「ルバート」はトラック12番目に位置し、アルバム後半に向かう転換点のような位置づけだ。

音楽用語を散りばめた歌詞は、詩と言葉を学ぶ少年の目線と自然にリンクする。また「ダカーポ」=最初に戻るという言葉が繰り返されることで、何度でも探し始める人間の姿が、書簡のやりとりという反復の構造とも呼応している。

まとめ——ヨルシカ「ルバート」が描くのは”ズレたまま生きることの自由”

「ルバート」は表面的には明るく軽やかな曲に聞こえる。「楽しい!」という言葉が連呼され、suisの歌声が跳ねるように乗っていく。しかしその裏には、自分のセンスを笑われながらも愛し続け、やがて手放し、それでも新しいものを探し続けるという複雑な感情の旅がある。

ルバート——自由なテンポで、誰のリズムにも合わせず、踊るみたいに踊り続ける。その姿は、n-bunaがこの曲で描いた「踊る女性」の形をしながら、同時に聴く人自身の姿でもあるかもしれない。

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