King Gnu「一途」基本情報——呪術廻戦0を彩った「全部がサビ」の主題歌
「一途(いちず)」は、King Gnuが2021年12月29日にリリースしたシングル「一途/逆夢」の表題曲であり、同年12月24日公開のアニメ映画『劇場版 呪術廻戦 0』の主題歌として書き下ろされた。作詞・作曲は常田大希が担当し、編曲はKing Gnu全体で手掛けている。
本作はKing Gnuにとって初のアニメ映画タイアップ曲となった。先行配信スタートの2021年12月10日には同日MV公開も行われ(なおこのMVはKing GnuのMVとして初めてPERIMETRONが制作に関与していない作品)、フィジカルCD発売直後にはシングル1位・ストリーミング1位・動画再生1位の3冠を達成した。
常田大希自身はFNS歌謡祭でこの曲を「全部がサビみたいな曲」と表現している。その言葉通り、楽曲のどこを切り取っても高密度なエネルギーが放射され続ける、King Gnuにとっても異色の楽曲だ。
「全部がサビ」とはどういうことか——楽曲構造の分析
通常のポップスでは、Aメロ・Bメロ・サビという構造でエネルギーに強弱をつける。しかし「一途」はその常識を破り、冒頭から常田大希のダークで張り詰めたボーカルが全開で放たれ、楽曲全体を通して一切の緩みがない。
「サビってどこですか?」と問われると答えに詰まる——それが「一途」の正体だ。どの部分も高揚感と緊張感が同居しており、どこかで解放されるはずの「サビ」の快楽がないのに聴き手を引き付け続ける。この構造は、常田大希が持つ「J-POPのフォームを壊しながら成立させる」という作曲の哲学の体現でもある。
また冒頭とラストに同じメロディーが常田のボーカルで繰り返されるという円環構造も特徴的で、楽曲全体が「終わりに向かいながら始まりに戻る」という「最期」という言葉のテーマとリンクしている。

歌詞の意味を考察——「最期にもう一度」が指す二つの声
「一途」の歌詞は、二つの異なる視点から語られていると読み解ける。「最期にもう一度 強く抱きしめて その後はもう 何も要らないよ」という冒頭のフレーズは、愛する人を抱きしめる者の言葉だ。しかし「最期にもう一度 力を貸して その後はもう 何も要らないよ 僕の未来も心も体も あなたにあげるよ」という後半のフレーズは、力を借りることで完全に燃え尽きようとする者の覚悟を歌っている。
前者が「里香から乙骨への言葉」、後者が「乙骨から里香への言葉」と解釈すると、映画のラストシーンと完璧に重なる。成仏する里香が最後の力でけじめをつけ、乙骨が「全部あげるから力を貸して」と里香に懇願する——その相互の愛の交換が、この曲のAメロとラストで表現されているわけだ。
常田大希×井口理のボーカルの対比——「ビターとピュア」が織りなす一途
「一途」のもう一つの特徴は、常田大希と井口理という対照的な二人のボーカルが絡み合う構造だ。常田のボーカルは楽曲冒頭から渋くビターで、温度が低いのに燃えているような緊張感がある。そこから井口のピュアで突き抜けるような高音へとバトンが渡される瞬間の落差が、この曲に唯一無二の奥行きを与えている。
音楽ライターの松本侃士は「一途」について「長きにわたるJ-POP史を振り返っても、これほどまでに激しく真っ直ぐで、もはや破滅的とも捉えられるラブソングは極めて稀」と評している。歌詞の内容は「あなたへの愛」という普遍的なテーマでありながら、ボーカルの温度感が完全にビターとシリアスで、その乖離こそが「一途」を単なるラブソングではなくKing Gnuにしか作れない楽曲にしている。
『劇場版 呪術廻戦 0』との関係——乙骨憂太と里香の愛に寄り添う主題歌
『劇場版 呪術廻戦 0』の主人公・乙骨憂太は、幼馴染の里香を愛しすぎたゆえに彼女を呪霊として縛り付けてしまった少年だ。本来解放してやるべき存在を、愛によって縛り続けてしまっているという矛盾と罪悪感——その感情が「一途に見つめます」「一途に向かいます」「一途に愛します」という三段階の「一途」という言葉に凝縮されている。
「正義と悪など 揺らいでしまう程 生き急いでた」「矛盾だらけお互い様ね」というフレーズは、呪術師として「正しく生きること」と「里香への愛」の間で引き裂かれる乙骨の内面そのものだ。映画のオープニングから流れ始める「一途」を聴きながら、観客は乙骨の「一途さ」という美しさと痛さの両方を受け取ることになる。

まとめ——「一途」がKing Gnuの新章を切り開いた理由
「一途」は、King Gnuというバンドが最高の状態で最高のタイアップと出会った一曲だ。常田大希の「全部がサビ」という言葉の通り、どこを切り取っても密度が落ちない。そしてその密度の中に、乙骨憂太と里香の「一途な愛」という普遍的な感情が宿っている。
King Gnu初のアニメ映画主題歌として3冠を達成したこの曲は、バンドにとっても転換点となった。「破滅的とも捉えられるラブソング」——それこそが「一途」であり、King Gnuが一途に表現し続ける音楽の核心だ。
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